「海外で働くには英語がペラペラじゃないとダメ?」──これは海外転職を検討する人が最初に抱く疑問ですが、答えは「職種と国による」です。シンガポールの金融業界では TOEIC 900点相当の英語力が求められる一方、ベトナムやインドネシアの日系製造業では TOEIC 600点台でも十分に活躍できるポジションがあります。
大切なのは、「ペラペラかどうか」ではなく「自分が目指すポジションで必要な英語力はどのレベルか」を正確に把握し、そこに最短距離で到達するための学習計画を立てることです。
本記事では、海外勤務で必要な英語力を職種別・レベル別に整理し、現在のスコアから目標スコアまで最短で到達するための学習プランを具体的に紹介します。
目次
海外勤務の英語力は「4技能」で測る

日本ではTOEIC L&R(リスニング&リーディング)が英語力の指標として広く使われていますが、海外勤務で必要なのは「読む・聞く」だけではありません。「話す・書く」を含めた4技能のバランスが求められます。
| 技能 | 海外勤務で使う場面 | 測定できる試験 | 重要度 |
| リスニング | 会議、電話、現地スタッフとの日常会話、オンラインMTG | TOEIC L&R、IELTS | ★★★★★ |
| リーディング | メール、契約書、社内文書、レポート、マニュアル | TOEIC L&R、IELTS | ★★★★ |
| スピーキング | 商談、プレゼン、部下への指示、交渉、面接 | TOEIC S&W、IELTS、英検 | ★★★★★ |
| ライティング | メール作成、議事録、報告書、提案書 | TOEIC S&W、IELTS | ★★★★ |
TOEIC L&Rで800点を持っていても、スピーキングが苦手で会議で発言できないケースは非常に多いです。逆に、TOEIC 650点でも海外生活で鍛えたスピーキング力で現地スタッフを束ねている人もいます。スコアはあくまで「入口の指標」であり、海外で活躍するには4技能をバランスよく鍛えることが不可欠です。
職種別・英語力の目安一覧

以下は、海外勤務(主にアジア圏の日系企業・外資系企業)でよく見る職種ごとの英語力目安です。TOEICスコアはあくまで「最低ライン」であり、「理想ライン」を超えていると採用で明確に有利になります。
| 職種 | 最低ライン | 理想ライン | 主な英語使用場面 | 求められるスキル | 備考 |
| 製造管理 / 工場管理 | 600〜700 | 750〜800 | 現地スタッフへの指示、品質会議、日本本社への報告 | 技術用語の英語、指示出し、報告メール | タイ語・ベトナム語等の現地語ができると加点 |
| 法人営業(日系顧客向け) | 600〜700 | 750〜850 | 顧客訪問、見積書作成、社内会議 | 商談英語、提案書作成、メール | 顧客が日系なら日本語メインの場合も |
| 法人営業(ローカル・外資顧客向け) | 750〜800 | 850〜900 | 英語での商談、価格交渉、プレゼン | 交渉力、プレゼン力、契約書の読解 | シンガポールやマレーシアでは必須 |
| 経理・財務 | 650〜750 | 800〜850 | 月次レポート、監査対応、本社報告 | 会計用語の英語、財務報告書作成 | IFRS知識があると加点 |
| 人事・総務 | 650〜750 | 800〜850 | 採用面接、労務管理、社内規定の英訳 | 労働法の基礎英語、社内通知作成 | 現地労働法の知識が重要 |
| ITエンジニア / SE | 600〜700 | 750〜850 | 技術文書の読解、仕様書作成、チームMTG | 技術英語、コードレビュー、Slack等のテキストコミュニケーション | 読み書き中心。日系ブリッジSEは日本語力が武器 |
| マーケティング | 750〜800 | 850〜900 | 市場調査レポート作成、広告代理店との折衝、SNS運用 | マーケティング用語、コピーライティング | 現地消費者理解が英語力より重要な場合も |
| カスタマーサポート | 500〜600 | 650〜700 | 日本語での顧客対応がメイン。社内連絡に英語 | 日本語力が最大の武器。英語は社内連絡レベル | BPO系はTOEICスコア不問の場合も |
| コンサルタント / 金融 | 850〜900 | 900〜950+ | クライアント折衝、レポート作成、プレゼン | 高度な交渉力、論理的な文書作成、専門用語 | シンガポール・香港ではネイティブ級を求められるケースも |
| 経営幹部 / GM / MD | 800〜850 | 900+ | 経営会議、取締役会、政府機関との折衝 | リーダーシップ英語、スピーチ、メディア対応 | 英語力+経営力のセットが必要 |
赴任先の国・地域別に求められる英語力の違い

同じ職種でも、赴任先によって求められる英語力は大きく変わります。英語が公用語の国と、現地語が主流の国では、日常的に使う英語の量がまったく異なるためです。
| 国・地域 | 公用語/ビジネス言語 | 社内の英語使用頻度 | 社外の英語使用頻度 | TOEIC目安(中堅職) | 現地語の重要度 |
| シンガポール | 英語 | ほぼ100% | ほぼ100% | 800〜900+ | 低い |
| マレーシア | マレー語/英語 | 70〜90% | 60〜80% | 750〜850 | 中程度 |
| フィリピン | フィリピノ語/英語 | 60〜80% | 50〜70% | 700〜800 | 中程度 |
| タイ | タイ語 | 30〜60%(日系企業内) | 20〜50% | 650〜750 | 高い |
| ベトナム | ベトナム語 | 30〜60%(日系企業内) | 20〜40% | 600〜750 | 高い |
| インドネシア | インドネシア語 | 30〜50%(日系企業内) | 20〜40% | 600〜750 | 高い |
| 中国(上海・深圳) | 中国語 | 20〜50% | 20〜40% | 600〜750 | 非常に高い |
| インド | ヒンディー語/英語 | 60〜80% | 50〜70% | 700〜850 | 中程度 |
スコアアップに必要な学習時間の目安

TOEICスコアを100点上げるには、一般的に200〜300時間の学習が必要とされています(Oxford University Press等の調査に基づく)。以下は、現在のスコアから目標スコアまでの学習時間目安です。
| 現在のスコア → 目標 | 550→650 | 550→750 | 650→800 | 700→850 | 750→900 |
| 必要学習時間の目安 | 200〜300h | 450〜600h | 350〜500h | 350〜500h | 350〜500h |
| 毎日1時間の場合 | 約7〜10か月 | 約15〜20か月 | 約12〜17か月 | 約12〜17か月 | 約12〜17か月 |
| 毎日2時間の場合 | 約3〜5か月 | 約8〜10か月 | 約6〜8か月 | 約6〜8か月 | 約6〜8か月 |
このデータから分かるのは、転職活動を始めてから英語力を上げようとすると間に合わないケースが多いということです。「海外転職を3〜6か月後に実現したい」なら、今日から毎日最低1〜2時間の学習を開始する必要があります。
最短で目標スコアに到達する学習プラン

プランA:TOEIC 600点台 → 750点(3〜6か月)
海外勤務の「足切りライン」を超えるためのプランです。製造管理、日系向け法人営業、事務系ポジションを狙う方に適しています。
| 時間帯 | 学習内容 | おすすめ教材・ツール |
| 朝 30分 | TOEIC単語帳(金のフレーズ等)を1日30語暗記。音声を聞きながらシャドーイング | 「TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ」、Anki(アプリ) |
| 昼休み 15分 | 英語ニュースのリスニング。1記事を聞いて要約を頭の中でまとめる | NHK World、BBC Learning English、Podcast |
| 夜 45分 | TOEIC公式問題集のPart 5〜7を時間を計って解く。間違えた問題は文法ルールを確認 | TOEIC公式問題集(ETS発行)、「でる1000問」 |
| 週末 2時間 | 模擬試験を1回分通して解く。リスニングはスクリプトを見ながら再聴 | 公式問題集、abceed(アプリ) |
プランB:TOEIC 750点台 → 850点(3〜6か月)
外資顧客対応の営業、マーケティング、経理・人事などのポジションを狙う方向けです。この段階からスピーキング力の強化も並行します。
| 時間帯 | 学習内容 | おすすめ教材・ツール |
| 朝 30分 | ビジネス英語フレーズの暗記。会議・交渉・プレゼンで使う表現を1日5フレーズ | 「英会話1000本ノック ビジネス編」、Duolingo Business |
| 昼休み 15分 | 英語でニュースを読む。分からない単語は文脈で推測し、後で確認 | Financial Times、Bloomberg、Reuters |
| 夜 45分 | Part 3・4のリスニングを精聴+ディクテーション。Part 7は速読トレーニング | TOEIC公式問題集上級編、「900点特急」シリーズ |
| 週2回 25分 | オンライン英会話でビジネスシーンのロールプレイ(商談、会議、プレゼン) | Cambly、DMM英会話、レアジョブ(ビジネスコース) |
プランC:TOEIC 850点台 → 900点+(3〜6か月)
コンサルタント、金融、経営幹部、シンガポール勤務などを狙うハイレベル層向けです。
| 時間帯 | 学習内容 | おすすめ教材・ツール |
| 朝 30分 | 英語でのプレゼン練習。1テーマ3分で即興スピーチ。録音して発音・構成を確認 | 自主トレーニング、Speechify |
| 通勤 30分 | ビジネス系Podcastをシャドーイング。ネイティブのスピードに慣れる | HBR IdeaCast、The Economist Podcast |
| 夜 30分 | TOEIC S&Wの練習問題でライティング力を強化。ビジネスメールを英語で書く練習 | TOEIC S&W公式問題集、Grammarly |
| 週3回 25分 | オンライン英会話で時事問題のディスカッション。論理的に意見を述べる練習 | Cambly(ネイティブ講師)、Bizmates |
TOEICスコアがなくても海外で働ける?

結論から言えば、TOEICスコアなしでも海外で働くことは可能です。ただし、以下の条件を満たす場合に限られます。
| スコアなしでもOKなケース | 具体例 |
| 日本語対応メインのポジション | カスタマーサポート(BPO企業)、日本語教師、日本料理店スタッフ等 |
| 技術力が圧倒的に高い場合 | ITエンジニアで技術ポートフォリオが充実している場合。コードが英語力を補完する |
| 英語面接を突破できる実力がある場合 | TOEICを受けていなくても、面接で英語が通じれば問題なし。「実務英語経験3年」等で代替可能 |
| 現地語ができる場合 | タイ語やベトナム語が堪能であれば、英語力が多少低くても採用されるケースがある |
ただし、エージェント経由での応募ではTOEICスコアが書類選考の足切りに使われるケースが多いため、スコアがないと書類の段階で不利になります。「受けたことがない」と「受けたが低い」は印象がまったく違うので、海外転職を考えているなら最低1回は受験しておくことをおすすめします。
まとめ

海外勤務に必要な英語力のポイントを整理します。
- 英語力は「4技能」で考える ── TOEIC L&Rスコアは入口の指標。海外ではスピーキング力が最も重要
- 職種によって必要なレベルは大きく異なる ── カスタマーサポートは500点台から可能、コンサル・金融は900点以上が必要
- 赴任先によっても変わる ── シンガポールは800点以上必須、タイ・ベトナム・インドネシアの日系企業は600〜700点台で可能
- スコアアップには100点あたり200〜300時間 ── 毎日2時間で3〜5か月、毎日1時間で7〜10か月が目安
- 学習プランは3段階 ── 600→750は基礎固め、750→850はビジネス英語+スピーキング追加、850→900は即興スピーチ+ディスカッション
- TOEICスコアなしでも働けるが不利 ── 最低1回は受験し、書類選考の足切りを回避する
英語力は海外転職の「必要条件」ですが「十分条件」ではありません。最終的に採用を勝ち取るのは、英語力と専門スキルの掛け算です。目標スコアに到達したら、次は英文CVの作成や面接対策など、実践的な準備に移りましょう。
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